3月23日マリ戦を引き分けた日本。真価を問われたウクライナ戦でも収穫は少なかった。チームとしての完成度を高める時期に明確になったのは、稚拙な戦術と人材不足という難解な課題だけだった。
核と呼べる選手の不在
就任以来、一貫して選手の見極めを行ってきたハリルホジッチ監督だが、いまだに中心選手を作れていない。若しくは指揮官の期待に答えられる選手が出てきていない。
現体制になってから継続して召集されている大迫や久保、原口といった選手も安定したプレーでアピールに成功しているとは言いがたい。これまで中心選手として活躍してきた本田や長谷部も、チームを引っ張る活躍はできていない。
個人のチームになってしまうのはいかがなものかと思うが、チームを牽引する選手の存在は非常に大事な要素でもある。
DF、MFの人材難は深刻
今回結果を残したといえるのは、一時同点となるゴールを決めた槙野ぐらいだろう。その槙野にしても攻撃に繋がる効果的なパスを前線に送れていなかった点でマイナスになる。
またコンビを組んだ植田に至っては実力不足を露呈。ゴール正面で安易に前を向かれたり、後ろのスペースをカバーできなかったりと中盤との連携や危機管理という点で及第点は与えられない。
もっと深刻なのは中盤だ。山口はボールを追うだけで、持ち味の攻撃の芽を摘むプレーはできなかったし、中盤で効果的にパスを繋がれてしまった。
攻撃面でもセカンドボールを奪えず、消える時間も多かった。そして経験豊富な長谷部にしても不用意なパスミスからカウンターをくらう場面が見られた。攻撃のスピードや効果的なパスが前線に出なかったのは明らかに中盤の責任でもある。
素早い攻守の切り替え
攻守の切り替えも鈍く、単純にボールを追いかけるプレスでは容易にいなされてしまう。また攻守の切り替えも遅いため、ボールホルダーに寄せたときにはパスコースを多く作られ繋がれてしまう。
そして、攻撃の際も相手の寄せのほうが早いため前を向いてボールを受けられず、ボールを奪われるか攻撃を遅れさせてしまう場面がほとんどで、ゴールに向かってのプレーができずじまいだった。
攻守の面で素早い切り替えは基本となることであるし、格上の相手と戦う際は、絶対に負けてはいけない部分でもある。今回の試合から日本は、この姿勢を改めて学ぶべきだろう。
唯一の収穫は中島翔哉
ネガティブな要素が多かった今回の試合で、唯一収穫といえるのが中島翔哉だろう。プレースキックでも有効なオプションになることが証明できた。なによりゴールに向かう意識が高い。
そして、他の選手に見られなかった積極的な仕掛けは見ていて希望が持てるものだった。相手をかわしパス、ドリブル、シュートなど複数の選択肢を持った状況で攻撃を仕掛ける場面はすべて中島から始まっていた。
マリ戦も含め、日本に不足している意識を中島が見せてくれたと思う。
試合後、ハリルホジッチ監督も一定の評価をしたように重要な戦力としてアピールに成功したと言っていい。
本番に向け有効な選手選考を
今回の中島のように、よさを十分に発揮できるメンタルや技術を持った選手を選考の基準としてほしい。
選手選考に向けリスクを犯さない選手より、思い切ったプレーができる選手のほうが見ていて気持ちがいいし、ゴールを感じさせてくれる。チームとしてゲームを構築する戦術的な要素も大事ではあるが、常にゴールに意識を向けられる選手を選んでほしい。
格上の相手が多いW杯でも、恐れず向かっていくチームはまだ作り上げられるはずだ。