こんにちは。
海外サッカー大好きの松嶋俊です。
いつもはマンチェスター・シティのサッカースタイルが好きでよく見ていますが、今回は銀河系軍団のレアルについて某プロサッカーコーチの立場から強さについて解説してみたいと思います。
私のInstagramのアカウントでは、日々マンチェスター・シティの試合のキーポイントとなる場面について解説をしています。
目次
1.レアル・マドリードの歴史
レアル・マドリードは1902年に創立。現在のホームスタジアムはエスタディオ・サンティアゴ・ベルナベウ。
現在はリーガ・エスパニョーラのプリメーラ・ディビシオンに所属し、同リーグにおいて34回の最多優勝記録を持つほか、FCバルセロナとアスレティック・クルブと共にリーガ・エスパニョーラの創立以来、一度もプリメーラ・ディビシオンから降格したことがないクラブです。
さらに2020年の時点で6クラブのみであるビッグイヤーの永久保持を認められた史上初のクラブであることで知られています。
獲得した国際タイトルは、UEFAチャンピオンズカップおよびUEFAチャンピオンズリーグにおいて歴代最多となる計13回の欧州制覇、さらにラ・ペケーニャ・コパ・デル・ムンド、インターコンチネンタルカップおよびFIFAクラブワールドカップにおいても歴代最多となる計9回の世界一を誇ります。
1-1.黄金期の開始
レアル・マドリードの黄金期は、2000年に、フロレンティーノ・ペレスが会長に立候補して当選したことから始まりました。実業家であるペレスは、レアル・マドリードに革命を引き起こし、これまでの借金を清算して経済面での危機を脱出しました。
ペレスが下した最初の決定事項の一つが、国際的に活躍する選手の獲得でした。2001年にはジネディーヌ・ジダン、2002年にロナウド、そして2003年にデビッド・ベッカムを獲得しました。これには、2億ユーロの費用がかかりましたが、この投資はのちに数多くの勝利へと結びつきました。6年の間、レアル・マドリードは、以下の大会で優勝しました。
- スペインリーグ2回(シーズン2000-2001と2002-2003)
- スーパーカップ2回(2001と2003)
- インターコンチネンタルカップ1回(2002)
- UEFAチャンピオンズリーグ1回(2001-2002)
- UEFAスーパーカップ1回(2002)
このように、このスター選手獲得により数多くのタイトルを獲得し、のちにスター選手ばかりが所属する《銀河系軍団》と呼ばれるようなチームへと変貌していきます。
1-2.現在のチーム


引用元:AFP
レアル・マドリードのスタイルは、育成組織も含め「できるだけ少ないタッチで、できるだけ早くゴールまでボールを運ぶこと」を理念に掲げ、育成組織もその理念のもと選手を育成しています。
しかし、スター選手が集まるレアル・マドリードはその理念を持ちながらも、ボールを保持することもでき、カウンターで攻撃することもでき、守備でもあらゆる攻撃にある程度なら対応することができる、いわゆる《万能型》なチームといえるでしょう。
試合の時間帯によって、何が最適なのかをある程度選手の判断に任せることで、様々なケースに対応することができる。一流の選手がいるからこそできる戦い方でもあります。
キャプテン:セルヒオ・ラモス
システム:4-3-3
1-3.ジダンの戦術~
「戦術は何の効果も生み出さない」とまで発言したことがあるジダン監督は、ペップ・グアルディオラや、マウリツィオ・サッキのような華麗なポゼッションサッカーを構築するわけでもなく、ジョゼ・モウリーニョのような、相手に合わせてシステムを変化させながら戦う固いチーム作りをするわけでもありません。
ジダン監督は、戦術における思考を最大限にシンプル化することで、チームの自主性と積極性を刺激することでチームとしての一体感を生み、全員が同じベクトルの向きで戦える体制を整備したほうが、スター選手ばかりが揃うレアル・マドリードには有効なのではないかという考えがあるのです。
決して戦術を軽視しているわけではありませんが、新しい戦術の発案ばかりに注目が集まっている現在のサッカー界の中で、ジダン監督は選手たちを信頼し、複雑なポゼッションサッカーをするのではなく、シンプルに少ないタッチでゴールを目指すことや、各々の個性が発揮できるような配置や、雰囲気作りをすることが一番だと考えているのです。
1-4.ミスターレアル
チームの中で長年、抜群の存在感を示しているのが、キャプテンであるセルヒオ・ラモスです。2005年夏にセビージャから、スペインの10代選手としては最高記録となる2700万ユーロの移籍金でレアル・マドリードに移籍してきたセルヒオ・ラモスは、フィジカル・スピード・予測・戦術眼・ボールコントロールなど、攻守において優れた能力を併せ持ち、特に高いスピード、跳躍力、アジリティによってオープンスペースだけでなくゴール前での空中戦やクイックなアタッカーとの地上戦においても強みを発揮し、チームに貢献してきました。
2015-16シーズンからはキャプテンを務め、銀河系軍団のリーダーとして活躍している。今シーズンも安定感抜群の守備と、ダイナミックな攻撃参加に目が離せません。
2.育成に対する考え
「育成のバルセロナ、勝利至上主義のマドリード」
長年のライバルであるバルセロナと育成組織を比較した際に、よく使われる表現なのですが、バルセロナのカンテラ(下部組織)である「ラ・マシア」は、2000年代前半、全盛を誇っていました。
リオネル・メッシ、シャビ、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケツ、セスク・ファブレガスら、バルサの一時代を築いたスター選手たちを次々に輩出し、2012-13シーズン中にはスタメンが全員カンテラ出身者という史上初の”快挙”を成し遂げたこともあるほど、育成に定評があります。
対するレアル・マドリードは2000年代、銀河系軍団と呼ばれたスター選手たちを獲得し、数多のタイトルを獲得しながらも、ラウール・ブラボ、フランシスコ・パボンらカンテラ出身者はチーム内であまり評価をされませんでした。
育成組織に関して言えば、バルセロナとレアル・マドリードには大きな差がありました。しかし、2009年に育成部門全体の立て直しを図ったことで、マドリーの育成組織は変化していきます。
その成果もあり、近年ではトップチームにもダニエル・カルバハル、ナチョ・フェルナンデス、ルーカス・バスケス、マルコス・ジョレンテ、マリアーノ・ディアスらカンテラ出身者たちが名を連ねていますし、カスティージャ(Bチーム)を経由したケースもカウントするならカゼミーロ、フェデリコ・バルベルデ、ヴィニシウス・ジュニオールらを含め実に10人程のメンバーがトップチームの戦力となっている。
また、下部組織からトップチームと同じフォーメーションを採用し、トップチームにも順応しやすい環境を整えてきたバルセロナに対して、マドリードは、年代毎にシステムや戦術も変化し、トップチームに合わせて選手を育成する供給型ではなく、下部組織ですら選手の特性を活かし常に勝利を目指す。
こういった経験により、どんな戦術でも、違うポジションでも力を発揮できる選手を育成することができ、トップチームに昇格できずとも、その他のチームや、海外のトップリーグで活躍し、のちにレアル・マドリードに呼び戻すことができる可能性も広がってくる。
しかし、フォーメーションや戦術は変えながらも、マドリーに根づく哲学はブレることはありません。
「シンプルかつ可能な限り少ないタッチでゴールを目指す」
あらゆるプレースピードが劇的に速くなっている現代サッカーにおいて、マドリードの目指すサッカーは時代に合致していますが、それは現在、時代の方がマドリードのサッカーに合う周期になっているだけで、マドリードは常に、時代、流行に左右されない不変的なスタイルを目指し続けています。
マドリードの育成部門で、20年以上にわたりトップチームへと選手を輩出してきたトゥリスタン・ロドリゲス氏も
だと語るように、現在のサッカーはマドリードが以前から目指すサッカーにフィットしていることが分かります。
2-1.中井卓大という存在
《ピピ》の愛称で呼ばれる中井卓大(16歳)は、9歳からマドリードの育成組織で過ごす日本人MFです。現在はフベニールCに在籍しています。フベニールとは、ユースという意味で、年代順にA、B、Cの三つに分け、現在中井選手はその一番下のチーム(C)でプレーしています。
そのフベニールで、順調に成長を続ける中井選手は、現地でも注目され、スペイン大手スポーツ紙『マルカ』の評価はとても高く
まだ線は細く、ゲーム終盤にプレー精度が落ちるのは課題だろう。しかし、着実にカテゴリーを上がっているだけでもすばらしいことだ。マドリードの育成組織は各国の有望な若手を常にスカウティングし、選手をふるいにかけ、入れ替える。昇格するのも簡単ではない」
と評価している。
いつの日か、久保建英とともにレアル・マドリードの歴史に名を刻む日本人選手になるかもしれません。
3.永遠のライバル~バルセロナ
両チームはリーガ・エスパニョーラにおいて2大名門クラブと呼ばれ、常に優勝を争う立場であるばかりでなく、マドリードとバルセロナというスペインの2大都市を象徴するクラブでもあるため対抗意識が非常に強く、エル・クラシコ(伝統の一戦)と呼ばれる両チームの試合はスペイン国内のみならず世界的にも注目されるサッカーの大イベントとなっています。
両クラブは度々、移籍市場でも争うことがあり、同じ選手の獲得を争うことを「移籍市場のクラシコ」とも呼ばれます。
また、両クラブ間の直接の移籍はタブー(禁断の移籍)とされており、移籍した場合ファンからの反発は激しく、過去にはベルント・シュスター、ミカエル・ラウドルップなどがバルセロナからレアル・マドリードへ、ルイス・エンリケなどがレアル・マドリードからバルセロナへと移籍し、相手チームのファンから大きな反発を受けました。
なお、サミュエル・エトオ、ハビエル・サビオラの移籍の場合はそれぞれのチームで戦力外であったため、それほど反発は起こらなかったケースもあります。
3.フィーゴの移籍


引用元:ZONE
禁断の移籍の中で最も反発が激しかったのがルイス・フィーゴの移籍です。フィーゴは当時のバルセロナの中心選手であり、2000年にバロンドールを受賞するなどまさにキャリアの絶頂期であり、バルセロニスタにとってバルセロナの象徴として愛されていました。
しかし、2000年8月、フィーゴは会見で「移籍はしない」という発言をしたにもかかわらず、その2日後、当時の移籍金世界最高額でレアル・マドリードへと移籍してしまいました。その結果、フィーゴに対してバルセロニスタは激怒し、フィーゴが経営するバルセロナ市内の日本料理店を破壊するなどの暴動が起きる事態に発展しました。
それほどまでに、両チームのライバル関係は激しく、エル・クラシコでは、毎回、全世界を巻き込んで大いに盛り上がるのです。
3-1.目指すスタイル
育成の話の際にも少し触れましたが、両チームの志向するサッカーも違いがあり、レアル・マドリードは、シンプルかつ可能な限り少ないタッチでゴールを目指すサッカーを志向していますが、対するバルセロナは、チームの象徴である【メッシ】を中心に、ボールを長い時間保持しながら、数多くのパスを繋ぎ、複雑なポゼッションサッカー志向しています。
この両チームが目指す《両極端》なスタイルもライバル関係をより激しくする要因にもなっているのです。エル・クラシコは今後も激しい試合が繰り広げられることは間違いないでしょう。
その他にも同じ都市を本拠地とするアトレティコ・マドリードもレアル・マドリードには対抗意識を持っている。
というのも、アトレティコの監督であるシメオネ監督は【アンチレアル】の意味を込めていつも黒いスーツに黒いシャツ、黒いネクタイで試合に臨んでいるのではないかと噂されている。あくまで噂なので、本当のところは分かりませんが・・・
4.久保建英の今後


引用元:THE ANSWER
今現在、レアルのレギュラーとして活躍できる可能性が期待できる日本人選手は、何といっても久保建英選手ではないでしょうか。2019年6月、レアル・マドリードへ移籍し、2019年8月、同リーグのマジョルカへの期限付き移籍を果たします。
マジョルカでその才能、技術を存分に発揮した久保選手ですが、レアル・マドリードには戻らず、2020年8月に同リーグの名門クラブであるビジャレアルへの期限付き移籍を果たします。レアル・マドリードのコーチングスタッフは、久保選手はまだレアルでは活躍しきれないと判断したのでしょうか、まだまだレアルで戦力として認められるには成長が必要なのです。
ビジャレアルでの成長を期待し、近い将来レアル・マドリードで得意のドリブルで相手を翻弄する姿を期待し、ビジャレアルでのプレーに注目していきましょう。
5.最新のマドリード(第2節終了時点)
ラ・リーガ2020~2021シーズン開幕第1節のマドリード対ヘタフェは、両チームが8月に欧州カップに参加したため2021年3月に延期され、第2節(レアル・ソシエダ)でスタートされました。ゲーム内容でいえば、あまり良いものではありませんでした。
選手間の距離が遠く、マドリードが目指す、シンプルかつ可能な限り少ないタッチでゴールを目指すサッカーはあまり表現できなかった印象です。しかし、まだ開幕したばかりで、選手たちの連携や戦い方など、これから向上させていくのでしょう。世界最高峰の選手たちの集団です、フィットするまでにそう時間はかからないはずです。
今後の試合に注目していきましょう。