テニス

ATPカップ 西岡良仁選手 VS バシラシビリ選手 分析してみた~シリーズ⑥~

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2020年テニスシーンの幕開け、初めての開催となった世界国別対抗戦ATPカップが開幕した。残念ながらケガのためエース錦織選手を欠く日本チームだが、2020年注目の世界73位西岡選手がシングルス1のエースポジションに抜擢された。

2019年シーズンから、上位選手と好試合を展開している24歳の西岡選手に注目している。西岡選手を追いかけ、そのパフォーマンスぶりをぜひ分析していきたい。

バシラシビリ選手

初戦ウルグアイ戦を3-0と快勝した日本チーム、予選リーグ2試合目の相手は、ジョージアである。この試合もエースとして登場した西岡選手は、ジョージアのエース バシラシビリ選手と対戦した。

バシラシビリ選手、身長185センチ、ランキング26位の27歳だ。様々なタイプの選手がいるATPツアーだが、バシラシビリ選手は典型的なパワーヒッターといえるだろう。

がっちりとした体格から繰り出されるショットは、ストロークのスピードがサーブを上回るのではないかと思わせるほどのスピード、キリオス選手、フォニーニ選手、ルビレフ選手などと並ぶツアー屈指のハードヒッターだ。

コースに決まれば、世界一のディフェンス力を誇るジョコビッチ選手や、ナダル選手からもエースを奪えるショットを持つ。

西岡選手が初戦で破ったクエバス選手よりもさらに上位の26位、壁はさらに高く、厚くなる。錦織選手も上位に上がってくる頃は、何度かこの辺りの壁に跳ね返されてきた。しかもパワー系の選手ということで、力で押し切られてしまう場合もある。初対戦となったこの試合はどんな展開だったのだろうか?

バシラシビリ選手戦戦況1

https://www.youtube.com/watch?v=zRBugQwMrj0

大型の車はスタート時に温まっておらず、まだ高いパフォーマンスを発揮できないように、バシラシビリ選手はローギアの状態、立ち上がりから安定している西岡選手が2ゲーム目をブレークして先行する。

その後エンジンのかかり始めたバシラシビリ選手のショットが、西岡選手のコートに炸裂し始める。しかし、西岡選手は届く範囲のボールは、かなりのパワーショットを打たれたとしても、見事に返球していく。

パワー負けしてミスをさせられることが非常に少ない。

サービスゲームでは、アドコートでは得意のワイドサーブでバックを狙い、ポイントを積み重ねていく。基本はバシラシビリ選手にバックハンドを打たせること、そしてフォアハンドへ打つ場合には、スピン、スライスを混ぜ合わせ、バシラシビリ選手に同じタイミングで打たせない。

ペースに乗れないバシラシビリ選手は、第一セットをダブルフォルトしてブレークされるという、良くない流れの取られ方で落としてしまう。

第一セットは6-2で西岡選手に凱歌があがる。

バシラシビリ選手戦戦況2

第二セットに入ると、バシラシビ選手はパワーでねじ伏せる前に、フォアハンドのクロスショット、すなわち西岡選手のバックハンドへ深いボールを送って、そこから展開する戦略に出てくる。

これによりチャンスボールを作り出せる状況が増え、徐々に巻き返してくる。

これに加え、西岡選手のサービスパフォーマンスがやや落ちてくる。ファーストサーブに苦しむようになると、たまらず3ゲーム目をブレークされてしまう。

しかし西岡選手は、こんな状況でも全くひるむ様子はなく、虎視眈々とブレークバックのチャンスをうかがう。4ゲーム目で30-40のブレークチャンスをつかみ、ここでバシラシビリ選手スマッシュがアウトに見えた。

チャレンジの末何とイン、がっくり来るところだが、全くそんな様子をみせず、バシラシビリ選手のDFを誘って見事にブレークバック。

しかし、ここから西岡選手のサービスゲームは大ピンチの連続、5ゲーム目は0-40と絶体絶命、7ゲーム目は15-40、押し切られれば一気に流れを持っていかれる場面だ。
ここをサービスのコース打ち分け、ワイドと見せかけてセンター、セカンドでエースを奪う、クイックサーブ、サーブ&ボレーとあらゆるショットを駆使して見事に切り抜ける。

バシラシビリ選手戦戦況3

大ピンチを切り抜けた西岡選手、チャンスを逃し続けたバシラシビリ選手の気落ちを見逃さない。

バシラシビリ選手の脳裏に後悔の念の残像が残っている8ゲーム目、西岡選手が怒涛の攻めを見せる。守るだけではない、試合展開、場面・場面で見事に集中力を発揮する。

あっという間にバシラシビリ選手サービスゲームを0-40とすると、バシラシビリ選手は一体何があったのかという様子で何とDF、あっさりとブレークを許す。

5-3と西岡選手がセット終盤で1ブレークアップ、見事な勝負強さだ。第二セットの4-3、この時点では全く勝敗の行方は分からなかった状況で、一気に流れを引き寄せた。

続くサービスゲームでは冷静さを失わず、ワイドサーブ、バックに取らせるボディサーブを中心に組み立てて危なげなくサービスゲームをキープ、6-2、6-3見事なストレート勝利である。

映像分析

https://www.youtube.com/watch?v=zRBugQwMrj0

58’00”付近から  西岡選手大ピンチを切り抜ける
第二セット2-2、西岡選手ブレークバック直後のサービスゲームで、0-40の大ピンチを迎える。驚異のパワーヒッターを相手に、これをいかに切り抜けたのか?

1’18’50”付近から 西岡選手怒涛の攻め!
第二セット 西岡選手4-3からのバシラシビリ選手サービスゲーム、再び大ピンチを切り抜けた西岡選手が、一転怒涛の攻めを見せる!

岡選手大ブレークの期待

どこまで行くのか、西岡選手のパフォーマンス、ついに世界26位のパワーヒッターも飲み込んでしまった!

これはもう本物であろう。

フロックでも、ラッキーでもない、しっかりとした戦略に、地力がプラスされ、ハイレベルな戦いを展開している。

そして不利な状況に決して屈しないメンタルの強さ、これは特筆すべきことだ。メンタルを鍛えることは難しい。それを西岡選手は天分の才能として持っている。

2020年シーズン、気をつけるのはケガだろう。

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