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ATPカップ 西岡良仁選手 VS ナダル選手 分析してみた~シリーズ⑦~

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テニスライターで西岡選手大好きのタマジです。

2020年テニスシーンの幕開け、初めての開催となった世界国別対抗戦ATPPカップが開幕した。残念ながらケガのためエース錦織選手を欠く日本チームだが、2020年注目の世界73位西岡選手がシングルス1のエースポジションに抜擢された。

2019年シーズンから、上位選手と好試合を展開している24歳の西岡選手に注目している。西岡選手を追いかけ、そのパフォーマンスぶりをぜひ分析していきたい。

最強ナダル選手

ATPカップ初戦ウルグアイ戦を3-0、続くジョージア戦を2-1と勝利した日本チーム、このブロック最強豪と思われるスペインとラウンドロビン最終戦に臨んだ。

エースポジションの西岡選手の相手は、現在世界ランキング1位に君臨するナダル選手である。過去ナダル選手と接戦を演じたこともある西岡選手、「ナダル選手に勝つための戦略は分かっている。」と語っている。

現時点世界最強、もはやレジェンドの領域に達しているナダル選手に対して、2020年初頭のオーストラリアで西岡選手はどんな試合をみせたのであろうか?

ナダル選手戦戦況1

https://www.youtube.com/watch?v=7QYhiuu21ZM&feature=youtu.be

フォアハンドは驚異的なレートでのスピンボール、バックハンドはやや直線的、タイミングをやや早くとるカウンター気味のショット、互いに似たタイプのテニスを展開する。

チャンスとみるやネットに詰めていき、見事なボレーで仕留める。

この両選手に現時点での差があるとすれば、それはサービスの威力、そしてフォア、バックともダウンザラインショットの正確性(とはいってもナダル選手のショットは、世界有数のピンポイントショットだが・・・)であろう。

30歳をとうに超えたナダル選手、対して西岡選手は24歳、若いころのナダル選手を思わせる抜群のフットワーク、コートカバー力は、むしろ現在のナダル選手を上回るかもしれない。

この試合は西岡選手が勝利するチャンスのあった試合であった。誠に惜しい試合だったというほかない。

第一セット第5ゲーム、ナダル選手サービスゲームで、西岡選手はナダル選手スマッシュを拾いまくり、逆にエースを奪い、基本戦略通りにナダル選手を振り回し、バックハンドダウンザラインを決めてブレークに成功する。

試合を通じて西岡選手はナダル選手バックハンドサイドへ、スピンの効いた深く高いボール、少し直線的な浅いボールを打ち込んでいる。ナダル選手を左右だけでなく、前後にも動かしてバックハンドショットを打たせる戦略だ。

そして少々甘くなったボールが来ればそれをダウンザラインにエースを狙う。

「たら」「れば」は禁物だが、ブレークアップ西岡選手3-2で迎えた6ゲーム目、西岡選手サービスゲームで40-0としながら、ナダル選手の圧力の前にブレークされてしまった。

このゲームを取っていれば、おそらく第一セットは奪取できていたであろう。

ナダル選手戦戦況2

それでも第一セットを奪うチャンスが再び訪れる。4-4で迎えた9ゲーム目、ややナダル選手パフォーマンスが落ち、ミスが出たところを付け込んで西岡選手がまたもやブレークに成功、セット終盤でのブレークでもあり、まさに後一歩のところへナダル選手を追い詰める。

しかしこのサービングフォーザセットで、ナダル選手が流れを変える一本を放つ。ナダル選手、そしてジョコビッチ選手もそうだが、大ピンチを迎えた時に究極のロブでそれを切り抜ける場面を何度もみてきた。

西岡選手にあと身長が10センチあったら、と思ってしまう瞬間だが、ギリギリのところでボールは無情にもラケットでスマッシュできない高さを通過していく。

このセットは西岡選手がナダル選手を追い詰めながらも、タイブレークに持ち込まれ、そこで驚異の集中力を発揮してきたナダル選手に奪われてしまう。

ナダル選手戦戦況3

西岡選手の素晴らしいところ、最大の強みといってもよい点は、メンタルレベルが落ちないことだ。通常を考えると、世界一位を相手に惜しいところで第一セットを取れず、なぜだったのか、こうすればよかったのかとそれを引きずりがちだ。

ところが西岡選手にはそういった一種の「落ち込み」をほとんど感じない。

ほぼ変わらないパフォーマンスで第二セットも展開し、西岡選手3-2で迎えたナダル選手サービスゲームで再びブレークのチャンスをつかむ。

このポイントは、ネット勝負に出たナダル選手がまさに世界一位の気迫を発揮し、西岡選手パッシングショットをギリギリでボレーして切り抜ける。これがビッグ3の強さなのだろうか?

そして西岡選手がほんの僅かにみせたスキをつかれ、4-4からのサービスゲームをブレークされてしまう。こうなると勝利を絶対逃さない気迫でプレーしてくるナダル選手に、ついに押し切られた。

映像分析

https://www.youtube.com/watch?v=7QYhiuu21ZM&feature=youtu.be

6’48”付近から  ナダル選手流れを変えるロブ
第一セット5-4、西岡選手1ブレークアップのサービスゲームで、0-15からナダル選手が流れを変える驚異的なロブを放つ。惜しい!西岡選手。

7’42”付近から 西岡選手の対ナダル選手戦略①
第一セット 西岡選手5-6からの西岡選手サービスゲーム、40-15のポイントで見事な西岡選手の対ナダル選手戦略が功を奏し、見事にゲームを奪う。

11’12付近から 西岡選手の対ナダル選手戦略②
第二セット 西岡選手1-0からナダル選手サービスゲーム、ナダル選手アドバンテージの場面で、原点回帰した西岡選手の戦略が再び生きる!

13’27”付近から 流れは渡さない、ナダル選手気迫のボレー
第二セット 西岡選手3-2からナダル選手サービスゲームでブレークポイントをつかむが、ナダル選手の勝負に出たネットプレーの前にセーブされる。

西岡選手ますます膨らむ期待

世界一位のナダル選手相手に、一時はかなり追い詰めるところまで攻めた西岡選手、実力のアップは疑いの余地がない。6-7、4-6のストレート敗退とはいえ、もう一歩でナダル選手を打ち破るという惜敗中の惜敗であった。

すべてのショットにおいて、弱点らしきものが見当たらない西岡選手、ナダル選手の弾む高い弾道のボールにも対応している。また、ラケットの届く範囲であれば、バシラシビリ選手のような豪打のプレーヤーに対しても見事に返球できる。

この西岡選手のプレーぶりは、全世界のATPツアープレーヤーがみているはずで、今後、かなり分析、研究されてくるに違いない。西岡選手としてはさらにそれを上回る武器を身に着け、世界の強豪と渡り合ってほしい。

2020年シーズン最初のグランドスラムは、もうすぐである。錦織選手が出場できない現在、西岡選手への期待は大いに高まる。

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